「授業のオンライン化」と「セーフティーネットとしての登校できる学校」

 

各地でオンライン学習が動き始めた。特に双方向型の遠隔授業を行っている熊本市の取り組みはみなさん注目していることと思う。

 

kyoiku.sho.jp

 

文部科学省も、オンライン学習が「教科書等の指導計画に照らして適切に位置付くもの」であり、教師が「児童生徒の学習状況及び成果を適切に把握することが可能であ」れば、学校で再度対面授業をする必要がないと通知している。

https://www.mext.go.jp/content/20200410-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

(「新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業等に伴い 学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)」p.11参照)

 

熊本市の挑戦がうまくいき、全ての自治体が熊本市のような取り組みができればこの窮地を脱することができるだろう。

しかし、私はそのようなことが言いたいのではない。今回の災難の中から始まったオンライン学習は、ここ数ヶ月を乗り切るためのその場しのぎではなく、ひとつ上のレイヤーでの「すべての子どもたちに学ぶ機会を与える」チャンスであると捉えたいのである。

 

考えてみてほしい。平時でも学校で授業を受けられない子どもはたくさんいるではないか。

 

いじめや学校生活に馴染めない児童生徒はもちろん、病気によって学校に行きたくても行けない医療的ケア児や入院を余儀なくされているケースは、学校が「対面授業」に固執しているがために起こる学習機会の喪失なのである。

現状の「学校での対面授業」はすでに多くの子どもたちの教育の機会を奪っている。

今は「学校に集まる」という大前提を崩すチャンスなのだ。

 

だからまずは、ゼロベースで全ての子どもを「学校に通わなくてもいい子ども」と「学校に通わなくてはならない子ども」に分けてから話を進めたい。

 

①「学校に通わなくてもいい子ども」は学校に通わなくてもいいし、対面授業を受けなくてもいい

自宅などのオンライン学習の環境が整っていて保護者がしっかり見てあげられる、学習意欲があって自ら進んで学べる、生活習慣が乱れないように家庭で配慮できる・・・。そのような子どもは自宅で学習すれば良い。

欧米ではホームスクーリングも一般的である。なにも学校で授業を受ける必要はない。

 

②「学校に通わなくてはならない子ども」は学校に通い、勉強する

逆に言うと、学校に通わなくてはならない子どもは、

自宅などのオンライン学習の環境が整っていない、保護者が見てあげられない、学習意欲があなく他人の手を借りないと学べない、学校がなければ生活習慣が乱れてしまう…

という子どもである。

今回では、保護者が医療従事者などで働かなければならず、子どもの学習のサポートができないとか、学校に行かなければ子どもの生活習慣が乱れてしまう家庭、保護者が仕事でいないため上の兄弟が下の兄弟の面倒をみると学習時間がなくなってしまう等々が考えられる。

平時でも学校がなければ子どもの学習や生活が危うくなってしまう家庭は多い。そのような子どもや家庭を選抜して学校に通わせる。学校をセーフティーネットとして機能させていくのである。

 

このように「学校に通わなくてもいい子ども」と「学校に通わなくてはならない子ども」に分けると、必然的に学校に集まる人数が減る。そうすれば、今回のような感染症が拡大している場合にも子どもが大勢集まる状況に比べれば感染リスクを抑えることができる。

 

 

オンライン学習を整備することは、今回のことが収束した後でも決して無駄にはならない。むしろ現在学校で勉強したくても勉強できない子どもたちにも学ぶ機会を与えるチャンスなのだ。「ここ数ヶ月を乗り切ろう…」と足元ばかりを見ていてはいけない。現在の流行が抑えられても、第2波、第3波が来る可能性は十分にある。もう世界は元には戻れないし、戻ってはいけない。

 

地域のこどもを一律で一つの教室に押し込めて一斉に同じことを教えるというのは教育的にも感染症対策的にも無理があったのだ。家庭では学習機会を失ってしまう子どもにフォーカスして学校という場所を機能させれば、学校は新たなフェーズに入ることができる。

 

「すべて」の子どもたちに学ぶ機会を与えるチャンスと捉えて未来へ進もう。

 

 

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