ノンネイティブへの「国語」

親の仕事の関係で地元の学校に行く羽目になった系のエピソードを見るのが好きなのですが、アメリカだと最初は大体紙とペンを渡されて後ろの席で絵を書いててと言われて、知らないうちにクラスで勉強してて、「子どもはすぐに慣れて平気で英語で話すようになるんですよ」というケースが多いですね。これはおそらく小学校低学年の場合であって、それが小学生でも高学年になると自我も芽生えて努力もしないと周りのネイティブと同じ授業についていくのも辛くなります。

 

文部科学省が隔年で発表している日本語指導が必要な外国籍・日本籍の児童生徒の調査があります。(日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成28年http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/06/__icsFiles/afieldfile/2017/06/21/1386753.pdf

日本でもこのエピソード的な現実は数多く存在するようで、日本語指導が必要だと判断された児童生徒は増加傾向にあり、今後も増えることが予想されます。

日本語教師募集のサイトで福岡市の小中学校の募集が出ていてびっくりしたのですが、これもその傾向の現れでしょう。福岡市も本気です。

福岡市 平成29年度 特別募集(日本語指導教諭)福岡市立学校教員採用候補者選考試験の実施について

 

世界共通語たる英語なら「英語ができない」日本人にもある程度馴染みはありますが、英語に対するドイツ語、フランス語に対するスペイン語などとは違い、どの言語にも似ていない日本語を一から習得するのは本当に大変だと思います。

現在日本の学校で教育を受ける以上は日本語ができたほうが有利なため、日本語を習得する機会があるのであればぜひ習得してもらいたいと思います。習得することで、その児童生徒の将来の可能性も広がるので、やって損ということはないでしょう。

 

本来、その土地の言語の未習得が個人の能力の低さを表すということではありません。どんな言語を使用したとしても根底にある思考力・分析力・表現力を身につけられるのが教育です。日本語ができないからといって、該当児童生徒のその力を身につける機会が奪われるということはあってはなりません。

その児童生徒が英語ができる場合、授業で扱う内容を全て英語訳するなど、英語を介して授業を教えるというのも有効だと思います。その教科の先生が英語ができるのが一番効率が良いですが、英語ができる先生はそんなにいないと予想されるので、英語の先生にご協力いただくのが一番手っ取り早いですね。言語をそれぞれに合わせることによって、日本語がわかる側も分からない側も満足できる授業が可能です。

ただ、文部科学省の調査を見ると母語が英語でないほうが多いし、英語だけでも準備は大変です。そこでテクノロジーの力を活用し、それぞれの得意な言語で授業を受けられるようにできれば教育の不平等も解消されます。イメージはみんなイヤホンとマイクを使用している国際会議です。

グーグル翻訳も、現在は「なんじゃその訳は…っ!!!」というものも多いですが、かなりのスピードで学習しているでしょうから、数年後には「もののあはれ」だって上手に翻訳してくれる時代が来るはずです。

未来の教室は、様々な言語が飛び交い、思い思いの言語で自分を表現できる空間になるかもしれませんね。

 

外国人児童生徒の学びを創る授業実践 -「ことばと教科の力」を育む浜松の取り組み